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[ 井上敬康氏インタヴュー 1/2 ]

2015,02,03

追われる生活、焦るココロ。

求道家が語る"明日の徳"

 毎月第3金曜日の夜、原宿のとある一室でアストックサロンという研究発表会が行われている。サロンという名は古いのでは?と言う声も多いなか、私は味わったことのない古き良き日本みたいなものをそこに感じている。今回はアストックサロンの主催者の一人、井上敬康氏にお話を伺った。

お手洗いからなかなか出てこないなと思っていたら、「お待たせ、今写真撮って!髪型直してきたから」とニッコリする井上氏。背景がトイレだということをまったく気にしない、さすがアストックのキング・オブ・チャーミング。髪型を慎重にキープしつつ、正面入口まで移動していただきました。

 

そんなのってある?!伝説の飲み会。

 アストックサロンではいつも講義が終わったあと飲み会へ行くのだが、前回その飲み会で伝説が生まれた。

入ったお店で席が空いておらず、(いや、金曜21時の原宿で、8人がいきなり座れる居酒屋があるのかといつも思うのだが、) 私が「別のお店に行きましょうか?」と声をかけようとしたその時、「カウンターが空いてる、いいよね!」と井上さん。私たちの座る向かいにはシェフやバーテンダーがいるわけでもなく、ただただ壁が広がり、お一人様用のセルフオーダー端末がずらりと飾られていた。カウンター横1列の飲み会を仕掛けてくる男には、今後もなかなか出会えないと思う。そんな井上さんは武道家であり、研究家であり、マクロビオティック師範でもあり、絵も描き、ちょっぴりかっこつけでもある。

スケッチを見くびるな!

 井上さんは美術大学出身だ。インタビューの日も一緒に絵を見こうと連れて行って下さった。井上さんは「普段何気なく見ているものをスケッチしてみると、いかに観察していなかったかよく分かる」と言う。確かに、顔を描こうと思っても、口元一つとっても難しいし、シワの数も初めてそこで数える。毎日毎日見ている顔も、所詮そんなものなのだ。「描くことによって発見・疑問が生まれ、それが探求へとつながっていくんだよ。絵と科学はつながってる。あのダ・ヴィンチなんてそうでしょ?」と、スケッチで養われる観察力のすごさを私はじわじわと感じ始めた。

 日本の誇る生態学者である梅棹忠夫もスケッチを重視していた、と彼のお弟子さんが言っている。「スケッチすることで分からないことが分かるわけだ。大体書くこと自体が自分の思考を精密にする作業で、僕はそれを重要だと言っているんだよ。スケッチでもいいし、文章でもいい。書かないと一向に精密にはならない」と井上さんは続けた。

アストックサロンはルネッサンスだ!...( ́・ω・ )?

 井上さんには川喜田二郎先生の思想がある。川喜田先生の元で長年KJ法を学ばれ、KJ法新宿塾の塾長として教えていた時期もあった。

 川喜田二郎先生 ・・・文化人類学者

    KJ法    ・・・膨大なデータをまとめるための技法   (注)単純にまとめればいいってもんじゃない!

    おすすめ本    ・・・『創造性とは何か』 (祥伝社新書) 初めての方向け

 

 その川喜田先生の思いが、今のアストックサロンにも入っているんだと井上さんは言う。「皆が出会い、創造を高め合い、それが学問であろうと芸術であろうと、運動系でもよし、武道でもいい、そういうジャンルの違うものがお互いに刺激し合いながら創りあげていくのは、なんかかっこいいよね。『アストックはルネッサンスだ』これは平澤さん(アストックメンバー)の言葉だけどね、ほんとうまいこと言うよ。」井上さんはなんだか嬉しそうだった。

ちっちゃいこと言わずに、僕はオープンに伝えていくよ

「だんだん年齢があがってきているでしょ、自分たちは。魂はずーっと変わらず若いんだけど、一応今の生物界ではそういう仕組みがあるみたいだから、、笑。だから生きているその時に、なんとしても先輩たちが伝えたかったことを僕は伝えなくちゃいけない。先代の技術・思想・考え方など、それを持っていると生きる意味が分かるし、楽にもなるし、役にも立つ。それをシステムなどで閉塞的に囲まれた中ではなく、オープンにどんどん伝えていく場の1つとしてアストックサロンがあるんだ。」

井上さんは先ほどのKJ法の川喜田先生や合気道の有川定輝先生、ヨガの沖正弘先生だったり、もう会うことができない大先生方と共に時間を過ごしてきている。本を読むのと実際に会うのはわけが違う。アストックサロンには井上さんのような方々が多く在籍し、若者にとっては生きた知識に触れ合う貴重な時間となるだろう。

右を向けば (横並びの会より)

「求道心」読めますか?

左を向けば (横並びの会より)

「求道心という、道を求める心というのを皆持っていると思います。」と井上さんが話始めた。求道心とは何かというと、それはグドウとかキュウドウとか呼び方はあるけれど、ずばり人間とは何か、それを真剣に求める心の

こと。真実を求めるという点では科学する心でもあるが、科学という場合には『探求』という言葉を使うことが

多い。求道という場合はあくまでも自分の本質を見極めていくことで、科学という学問とは違う。

 

「釈迦尊の教典には『頭の毛に火がついたように求道した』と書かれてあるんだよ。時間というのはすぐ経ってしまって、ほとんどは生活することに追われているわけ。より良い生活がしたい、とかね。でもそれは当然の人間の生きる力。人間の本質の1つは『生きて生きて生き抜く力』であって、それで人類がずーっとつながって今があるの。我々は38億年かけて今がある。」

モノマネも全力でやる

 インタヴュー当日、井上さんは朝の散歩でとあるハトに出会う。そのハトのモノマネを全力でやってくださるのだが、ここは日本橋三越の洒落たカフェ、笑わずにはいられなかった。ハトがくちばしだけを使って懸命に食べ物を探そうといている姿を見て、井上さんは人間ってすごいなと改めて思ったんだそう。

 

「手が使える、歩ける、脳も使える、人間というのは生物進化の中でも最高の1つになるわけだ。今この瞬間自分があるために宇宙があったと言ってもいいね。自分たちがえらいとか、そういうわけではなくて、そういうようなおかげで今があると思わないと。探検しなきゃ分からない、世の中は果てしないほど奥が深いんですよ。叩かなきゃ開かないし求めなければ分からない、行かなければ、見なければ分からない。生活する、生きることはもちろん大変で、それに追われてしまうことが多いね。でも生きることが安定して良くなるのも、実は求道心と関係している。そこを掴んでくると、うまく整う状況も生まれるんだ。」

最近あなたは誰かに、何かを発表する機会はありましたか?

 社会人になると、発表する場というのは学生の頃に比べるとぐっと減る。仕事でプレゼンをしなくちゃいけなくなると、ここぞとばかり熱も入って準備をし、適度(いや、重度)のプレッシャーを感じながら当日を迎えるものだ。仕事でなくても同じで、誰かに発表しようと思うとより調べ上げる。ネットで得た知識を堂々と言うのはちょっと気が引けるもの。

 

「ただ勉強しているとそれだけで終わってしまうけれど、皆に伝えるとなると勉強意欲が明らかに変わってくる。そこが重要なんだよ。皆がいて発表する場所がある、例えば年に一回でも発表する場所があればそれに向けて1年間計算してやっていく励みにも繋がるよね。この効果もアストックサロンの狙い1つだよ。」

 

時にスピリチュアル

 時に井上さんはスピリチュアルな話もする。「宇宙の法則通りに生きていれば、自分も他人もうまく生きられるようになる」とおっしゃるので、今の世の中は宇宙の法則から見て悪い流れに進んでいると言えますか?と伺ってみた。ちょうど先日、後藤健ニさんの件があったばかりだったのだ。

 

「流れが悪いとは言わないけど、良いとも言えないな。」

 

宇宙の法則というのが分かってくると、そんなにあくせくしなくても皆で良い方向、生かし合う世界へいくんだとか。エネルギーと知恵を受けて働かせていけば、宇宙は生かそうとする。そんなにバタバタしなさんな、と井上さんはのんびりおっしゃった。

一度アストックサロンに遊びにきてね

 月1開催のアストックサロンも、先月20回目を迎え(2015.2現在)、勢いに乗っています。決まって第3金曜日の開催、どなたでも参加していただけますヨッ!

 

 

こんな人に向いているかも…

 

・人間探求に興味があるアナタ

・チャーミングな人たちに囲まれてみたいアナタ

・こっそり熱心に研究していることを誰かにぶつけたくなってきたアナタ

・第3金曜日の夜をいつも持て余しているアナタ

・生まれ育った日本のアレやコレについて知りたいアナタ

・毎日のマンネリ化がなんだか居心地悪いなーと感じているアナタ

 

 

ピン!ときたら、ぜひご連絡くださいませ。

 

インタヴュー記事まだまだ続きます。読んでネ!

※つづきは近日中あっぷ予定。先に番外編をどうぞ↓

「宇宙の法則」と言われると、とにかく疑いたくなる(笑)

たしかに、「信じるだけで幸せになれます」というようなオカルト集団と、井上さんのおっしゃりたいことは違うと思う。正直に生きて、まじめに働き、常に周りのことを気にかける、その上で「うまくいく!」と信じることが、ここで言う宇宙の法則なのではないか、と私は受け止めている。

宇宙とか神とか、そういう類いの言葉を使うときって難しいなぁ。言葉自体が曖昧だもの。

what

do you

think?

講義だけでなく打ち上げも大事にするのがアストックサロン。

以前酔っぱらった井上さんと言い合いになったことがあり、とても楽しかったのを覚えています。

一人の人として真剣にぶつかってきてくださる皆さんがいる、それもアストックの魅力ですよ〜。

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